過失割合
過失割合
トラックを荷物の輸送手段として利用している運送会社では交通事故が起きます。
事故が起きたときには、保険会社に連絡してその後の処理をしていきます。
そのときに課題になるのが【過失割合】
多くの場合は、過失割合を保険会社の担当者を通して保険会社に自分たちの言い分を伝え、保険会社の担当者間で話し合いをすることで決します。
代理店が過失割合の話し合いに関わるときは、その代理店の能力にゆだねられることもあります。以前、過失割合の知識が乏しいにも関わらず「専門家」としてふるまわれる、ひどい経験をしたことがあります。営業は熱心だけれども、いざというときに顧客を守るための知識を持たないところとはお付き合いをしたくないものです。
【過失割合】については、少々納得いかなくても時間や人的消耗を考えたときは、おおよそ保険会社にまかせて解決していくのは、合理的な判断だと思います。本業以外のところに時間や人を費やしたくはありません。しかし、保険会社丸投げではなく、自分たちも知識とスキルを持つことで、必要なときには、泣き寝入りのない交渉ができるようにしていくことも大切だと思います。
過失割合の資料
一般的に保険会社は、判例に基づいて過失割合を話し合うと言われています。
「契約している保険会社だから自社側の視点で交渉してくれるだろう」と思うのが自然ですが、けっしてそうではありません。
例えば、交差点で起きる事故も、そのときどきによって事故原因が違い、その違いが過失割合に関わってくるはずですが、保険会社ではまず【一般的な数字】から交渉がはじまることが多くあります。
交渉の際に使用する資料は保険会社によって違いがあるとおもいますが、私たちが利用することができる資料には次のものがあります。
判例タイムズ

まず一番に挙げられるものは「別冊判例タイムズ 民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」。どのような内容かは、判例タイムズ社ホームページでサンプルを試し読みすることができます。
https://www.fujisan.co.jp/product/1281695978/b/1169424/
必ず1冊は事業所に置いて、事故処理に関わる社員は一読することが必須の資料です。
青本・赤い本

青本「交通事故損害額算定基準」、赤い本「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」
https://n-tacc.or.jp/book
いずれも損害賠償額算定基準についての内容です。裁判ではこの資料が参考として用いられています。
これらの資料で保険会社の担当者間で話し合われる内容と比較することも大切です。
その他
道路交通法 詳細
道路交通法についての詳細解説がある本です。
道路交通法本文とともに、概念・判例・要旨などの説明が書かれている本がいくつかあります。過失割合を考えるときの一次資料として関係する条文と解説そして過去の判例をみることで、目の前にある課題に向きあうために役立たせることができる資料です。

例)執務資料 道路交通法解説
写真の本はさすがに古いです。直近の本を購入することをおすすめします。道路交通法は改正が多いので毎年購入とかは大変です。なのでとりあえず手持ちの本を参考にして、ネットで最新情報を確認するなどが良いと思います。
Amazon 20訂版 執務資料 道路交通法解説
https://amzn.asia/d/4AEugch
交通事故処理に対する向き合いかた
これらの資料を基にいわゆる「一般的な数字」から交渉が始まります。一般的な数字は、判例タイムズや青本・赤い本が参考になります。
いままで通り、あいまいな決し方でも波乱なくスムーズに事が進んでいくことをのぞむならば「保険会社まかせ」で良いと思います。
しかし、そうはいかないケースがあった場合は、時間がかかっても、しっかりと向き合う姿勢を持つことが必要ではないでしょうか。
保険会社の担当者間で話し合われている過失割合交渉の際に自社側の意見を言い、少しでも小さい過失にしていくようにします。
以前、追突事故の場合は一方的に追突した側が100%の過失と言われていました。しかし最近は、追突された側の挙動によっては、けっして100%ではないことを多くの人が知っています。
とりあえず交渉は100:0から始まるかもしれませんが、過去の判例などを理解していることで、90:10を主張することもできます。乗用車の任意保険で最近の外資系ネット保険会社では、とりあえずの100:0を飛ばして、即座に90:10から交渉を始めることがあります。
このような会社の姿勢は、過去の判例や自社での経験をもとにした交渉を行うことで積極的に加入者の利益を守るという姿勢が明らかです。旧来の保険会社とは、ずいぶん違い、とても現実的な行動です。
自社車両に交通事故があったときの過失割合交渉において、大方は保険会社まかせであっても、時には自社の確固たる姿勢を前面に出した交渉をすることができる会社にすることは大切だと思います。
過失割合の交渉
運送会社の事業所では、交通事故の過失割合については保険会社まかせのところが多くあります、そうした事業所の担当者の中には、交渉の仕方についての理解が十分ではなく「現場で相手方に強気の姿勢を見せろ」などという管理者もいました。
現場に来た「警察官への印象が過失割合に関わる」などという管理者もいました。確かに、現場で警察官が発した言葉による影響や報告書の書き方による証明書への影響があるかもしれませんが、警察は過失割合には関与しません。
過失割合の交渉方法には、根拠不明の風説があります。以前行った交渉で効果があったと思った言動を真実だと信じてしまった人の考え方と思います。
過失割合の交渉において、「現場で相手方に強気の姿勢を見せろ」「警察官への印象を良くしろ」そのようなことも影響するかもしれませんが、少なくとも、道路交通に関してプロであるべき運送会社の管理者がそのような幼稚なことを言わないようにしたいものです。
過失割合の交渉は、事実と証拠を積み上げて行っていくものです。
プロであるドライバーが事故を起こしたとき、会社は正々堂々とドライバーを守る
プロであるドライバーは絶対に事故を起こしてはいけません。普段からそういう教育を受けているドライバーは、たとえ自分に非がないない事故でも、「自分のせいだ」と思い込みます。その思いはとても大切です。自分のせいと思うことで、確実に次の対策につながるからです。
そうした考えから、以前、佐川急便富士店の運行管理者であったとき、事故を起こしたドライバーには、社内では厳しい対応をとりました。しかし過失割合という対外的場面では積極的に関与し全面的に守る姿勢をとっていました。
事故は、ドライバーの責任だけでは、ありません。指導や教育が十分ではなかった面があったから起きたのです。事業所が行ってきた教育や指導による「絶対安全」が実現していない事実を受け止めて次の対策を考えていく機会にします。
しかし今までの対策の中で実直に行動してきたにも関わらず事故を起こしてしまったドライバーは、会社が責任をもって守らなくてはいけません。
そのため「過失割合」という課題について、必要と思われたときは、徹底的に向き合ってきました。
【双方の車両が動いている中での交差点事故では過失ゼロにはならない】そんなことは、ありません、確かな事実と証拠をもって、ゼロにしたことがあります。
【すれ違いの事故では、過失ゼロにはならない】そんなことは、ありません。2つのケースで確かな事実と証拠をもって、ゼロにしたことがあります。
普段は、保険会社まかせであっても、必要があると判断した時は、積極的に交渉に関与して徹底的に向き合う。ゼロにすることは、かなわなくても、少しでも過失を小さくしていくことに全力を尽くす。そのための知識とスキル、交渉力を持つことは、管理者にとって大切なことです。
時に、過失割合の交渉をすることは、ドライバーを守る、会社を守ることでもあると考えています。
次回は、【過失割合】をどのようにして、交渉していくか、実践についてお話をしたいと思います。
過失割合の交渉に進んでいくときには、向きあわなければならない4つの相手がいます。
状況によって4対1の取組み課題になるかもしれません。その4つの相手とは・・・というところから始めたいと思います。


