耳垢
耳垢
佐川急便の事務員であったとき、毎日200本以上の電話をとっていることがありました。そのころ、普段、営業所には500本くらいの電話がかかっていました。
3分の2くらいが荷物の集荷依頼の受付で3分の1ぐらいが荷物の問合せです。
荷物の問合せの中には「届かない」「荷物が壊れている」というようなクレームが含まれます。
年末の繁忙期になると、こうしたクレームが増えてきます。
電話が鳴り響き、クレームばかりになっていきます。
取る電話、取る電話、クレームばかり、そのうち電話に出るときの言葉を「ありがとうございます〇〇です」から「申し訳けございません〇〇です」に変えようと思ったくらいです。
毎日必死になってクレームに対応していると耳の奥が痛くなってきました。
机の左右の端に電話機が1台ずつあり、左の電話は左耳、右の電話は右耳でとっていまししたが、両方の耳の奥が痛くてしかたがありません。
どうしても我慢ができないほど痛くなってしまったので事務所を抜けて医者に行きました。
耳の奥をみた、少し老いた医者はおどろきました。
いままでに観たことが無い大きな耳垢が鼓膜に貼りついていたからです。
あまりの大きさに驚きながら、それを取り出したときはとても楽しかったようで、はしゃいでいました。
私は「クレームの耳垢」だと思いました。
この耳垢の塊をくずすと「バカやろう」「どうしてくれんんだ」「早く持ってこい」「責任者だせ」という怒号がでてくるかもしれないなあと思いました。
こうした感じのクレーム対応日々を送っているときは、クレームは慣れることもあり、怒られても冷静でいられました。
みなさんも若い時には、毎日怒られていて、怒られても平気なときがありませんでしたか。
いまは絶対に嫌ですね。ちょっと怒られるとすぐに凹んでいじけてしまいます。
でも、怒られるのは覚悟して行動しなければならないときがあります。
いままでにやっていなかったことをやるとき、その時は、誰かから怒られます。
30年位前だったと思います。
運行中は、ずっとヘッドライトを点けるように指示した時。
国道バイパスを絶対60キロ以下で走るよう指示した時。
右左折時に必ず一時停止をするよう指示した時。
その時は、どの運送会社もそんなことはやっていませんでした。
だから、クレームの電話が結構かかってきました。
「なんで点けてるんだ、まぎわらしい」「トロトロ走るな」「ぶつかるじゃないか」
何カ月もすれば、「当たり前の行動」になるようなことも、最初は誰かが怒ってきます。
何かをやろうとしたならば、それが今、「当たり前」のことでなければ、怒られる覚悟でやらなければなりません。
また、それをやろうと思います。
怒られること、やりませんか。楽しいですよ。