教育は両刃の剣
教育を簡単に考えていませんか
教育は両刃の剣
ある日、突然、会社で研修が始まります。
「今日から靴をそろえましょう」
「挨拶をしっかりしましょう」
「身だしなみを整えましょう」
「名札を必ずつけましょう」
経営者としては、「社会人として当然のこと」と思い、従業員のためにとルールを決め、研修を始めます。しかし、現場の従業員からすれば、
「なぜ急にそんなことを?」
「仕事の内容に関係ないことで口うるさく言われるのは正直面倒だ」
「今まで問題になっていなかったのに、なぜ急に?」
そんな不満が生まれます。
「社内ルールを決めたので、しっかり守るように」
そう指導を始めた途端、従業員の態度が冷たくなり、指示に従うのが形式的になってしまいます。
例えば、朝礼のときだけ元気に挨拶するが、現場では誰も挨拶をしない。
チェックがあるときだけ身だしなみを整え、それ以外ではだらしなくなってしまう。
問題は「ルールの内容」や「伝え方」ではなく、仕組みから考えることです。
大量退職の導線をつくる危険性
ルールを決めるのは経営者の自由です、しかしそれが従業員にどう受け取られるかを考えなければなりません。
ある運送会社での事例があります。
ある日、経営者が「運転前のストレッチを毎日やるように」と指示を出しました。
「安全のためだ」「体をほぐして事故を防ぐ」と説明しましたが、やらされる側のドライバーは、
「そんな時間があったら、早く出発したい」
「今までやっていなかったのに、なぜ急に」
「形だけやればいいんだろ」
結果、朝礼のときだけストレッチをやるものの、実際の運転前には誰もやらなくなりました。
さらに、毎朝「ストレッチをやったか?」と上司から声をかけられ、終業後も「今日の運転はどうだった?」とメールが届くようになりました。
最初は我慢していたものの、次第にストレスが積み重なり、「もうこの会社を辞めたい」という気持ちが芽生えてしまったのです。
このような事例は、決して珍しいものではありません。
ルールを一方的に押し付け、従業員の負担になるような指導を行うと、知らず知らずのうちに大量退職への導線を作ってしまうのです。
こうした導線を作ったうえで、さらに上司から毎日、安全運転や健康管理について声掛けをされたらどうなるでしょうか?
「安全運転したか?」
「体調は大丈夫か?」
「ちゃんとストレッチをやったか?」
点呼のときだけでなく、メールや電話でも繰り返し確認される。
これはまさに、「今すぐその導線を走ってください」と言っているようなものです。
そして、経営者は思います。
「こんなに教育しているのに、なぜ人が辞めるのか」
「教育では人は変わらない、会社も変わらないのか」
教育の本質とは
「勉強が大切、勉強が大切、勉強が大切」
「だから勉強しましょう」
「今日も勉強していますか」
毎日このような言葉を聞かされたら。さらにメールや電話で声掛けなどがされてきたら。
大量に伝えれば伝えるほど、強力に「導線を走れ」と言っていることになります。
しかし、教育が人を育て、より良い社会をつくるのは、間違いのない事実です。
教育を簡単に考えてはいけません。
手順、カリキュラム、方法をしっかりと整えず、間違った方法で教育を単純に実施してしまうことで、その影響は恐ろしいほど経営者自身に降りかかるでしょう。
「教育は両刃の剣」なのです。
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